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霊山寺本堂にて行われた平和祈願法要(導師は上田尚道代表)
当日は、上田尚道会長をお導師のもと、全国各地より集ったスーパーサンガの幹事による法要が営まれ、参列の皆さまとともに中国共産党による侵攻以来つづく弾圧による犠牲者の追悼と、チベットの解放と平和を祈念いたしました。法要に続いて、霊山寺に隣接する花岡平の一隅に建つ、チベット宝篋印塔に全員で参拝しました。その後、客殿に移動して在日チベット人のゲニェン・テンジン氏による特別講演があり、『ヒマラヤを越えて〜亡命チベット人として生きる』と題し、氏の生い立ちやチベットでの苦難と亡命、そして日本での生活のお話をお聞きしました。恐怖や悲しみ、怒りを感じるお話でありながら、ゲニェン氏の温かな笑顔と誠実な語り口、そしてチベットの音楽に参加者はみな胸を打たれました。最後に上田会長から、会として今後も変わらずチベットの平和のために祈り、行動していく決意が述べられました。
この結集の前に、スーパーサンガとゆかりあるニチャン・リンポチェ猊下と、当会を陽に陰に牽引された若麻績敬史上人がご遷化され、法要はもとより結集を通してお二方への追悼の祈りが捧げられました。大きなともしびを二つも失ってしまいましたが、お二方にいただいた仏の教えや平和への心は、これからも当会に息づいていくでしょう。
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宝篋印塔に祈りを捧げる参加者たち
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自身の生い立ちや亡命生活について語るゲニェン・テンジン氏
けれども、そのような力の誇示による圧力に屈せず、この日の法要の祈りを決して無にしてはならないという信念から声を上げ、宗派を超えて僧侶たちに広く呼びかけたのが「平和を願う僧侶の会」の僧侶たちでした。特に熊本蓮華院の川原英照師と善光寺徳行坊の若麻績敬史上人は、チベット人への強い連帯心をもって行動し、その輪は宗派を超えて広がり、やがて「宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会」が結成され、東京芝の増上寺様における第1回の結集へと進んでいったのでした。
その後、正式名称を「宗派を超えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会」とし、志を同じくする人たちが集い、チベットを支援する活動を続けて十五年が過ぎました。会は、チベット問題への注視を弛めず、社会に発信し、祈り、行動し続けています。
さて今回、長野で結集を行うにあたり、私たちは会の結成時を振り返るとともに、私たちを互いに結びつけ、結成へと突き動かした動機やきっかけ、あの善光寺本堂の祈りに集った私たちの胸にあった思いへと立ち返りたいと思いました。その思いは人それぞれだったと思います。ある人はチベット人への共感であり、ある人は暴力的圧政への怒りであり、またある人は人間への悲しみであり、人権抑圧への疑問であり、あるいは自由とは何か、平和とは何か、国家とは何か、宗教とは何かとの問いであり、人道や正義など、皆それぞれにあったでしょう。仏法に帰依し、ダライ・ラマ法王を慕う思いから駆けつけていた人も少なくないでしょう。
そんな原点回帰を願う結集が開かれた霊山寺のある花岡平には、もうひとつの原点というべき大切な場所があります。それが60年ほど前に多田等観師と亡命チベット人のラマたちによって、世界平和を願い建てられた宝篋印塔です。地域では「チベット経宝篋印塔」と呼ばれています。ダライ・ラマ法王も参詣されたこの塔の由来は、当会ウェブサイトに詳しいのでぜひご覧ください。
そもそも宝篋印塔というものは私たちが菩提心を起こす功徳を与えてくれる塔です。亡命ラマたちは世界の平和を願って、仏道の原点である菩提心の大切さを教えてくれる宝篋印塔を建立しました。一切衆生を救うために悟りを開こうと誓うのが菩提心です。ここから私たちは、ラマたちが世界平和、チベットの平和へのアプローチをどのように考えていたか想像することが出来るのではないでしょうか。世界の平和とは一切衆生の安らぎであり、その実現に向けたすべての取り組みは菩提心から生ずる慈悲の実践なのでしょう。
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終演後に撮影された記念写真
(スーパーサンガ幹事 岡澤慶澄)