言論の自由、報道の自由のない国で、恐怖と懐疑の状態下で生活する人々の本当の様子を理解するには、個人の記録に頼る必要がある。アジャ・リンポチェが腹蔵なく、ありのままに、彼のチベットにおける見聞と体験を書いたことは、その間の歴史にとって貴重な貢献である。
私の自伝は六十年来の中国とチベット、モンゴルの間の埋もれた過去を描いている。例えば中国がクンブム寺で行った宗教改革、文化大革命などの一連の政治運動、九〇年代のいわゆる「金瓶掣籤」、そして私の亡命などである。その中の一部の事件は中国当局によって広く宣伝されているが、どれも正確でないばかりか、むしろ入念に歪曲されている。歴史を尊重する立場から、私は自伝の中でできるだけ史実を復元したいと考えた。私は真相こそが時間の検証に耐えられると信じている。
1950年、チベット東北部オロンノール(現中国青海省)のモンゴル遊牧民の家に生まれ、2歳でチベット仏教ゲルク派創始者「ツォンカパ大師の父」の転生者と認定される。クンブム寺で僧院長としての教育を受け、ダライ・ラマ14世やパンチェン・ラマ10世からも直接教えを授かった。文化大革命を経験しながらも、仏典研究や寺院改革に取り組む。地域の災害対策、伝統医学の継承、初等教育の充実などにも尽力し、モンゴル人、チベット人を問わず、広く信仰を集める。1998年、米国に亡命し「慈悲と智慧のチベットセンター」を創設。また、ダライ・ラマ法王の長兄タクツェル・リンポチェ創設「チベット・モンゴル仏教文化センター」センター長も務める。世界中に仏教の教えを広める活動や、宗教の枠を超えた平和活動も行っている。
アジャ・リンポチェの著書は、これまで英語版、キリル・モンゴル語版、中国語版の3言語で出版されています(縦書きモンゴル語版・チベット語版・ポーランド語版・ロシア語版・中国語(簡体)版の出版を予定)。
この本は幼年期からアメリカに亡命した現在までの、アジャ・リンポチェの激動の半生を綴った初めての自叙伝です。アジャ・リンポチェは2014年、モンゴル国ウランバートル市に子供がん治療センターを設立して、その運営及び慈善事業を行っており、著書の売り上げは、この病院に寄付されることになっています。また、2017年より、ウランバートル市に学校建設を予定しています。
開催日時
日時:11月25日(土)
開場14:30 開演15:00 終演17:00
会場
TKPガーデンシティ天神 M4会議室
福岡市中央区天神2-14-8
天神センタービル8階
福岡天神センタービルは天神の有名なビルで緑の「りそな銀行」の袖看板が目印です。
●福岡市地下鉄空港線 天神駅 1番出口 徒歩0分
●西鉄天神大牟田線 西鉄福岡駅 徒歩4分
https://www.kashikaigishitsu.net/facilitys/gc-tenjin/access/
参加費
お一人様 1,000円(申込不要)
【懇親会のお知らせ】
講演会終了後、アジャ・リンポチェを交えた懇親会を開催いたします。是非、ご参加ください。
会場:モンゴルホト 福岡市南区向野2-6-23
参加希望の方は、必ず下記メールにてお申し込み下さい。
osaka@arpc8.net
お問い合わせ
講演会実行委員会・事務局
TEL 090-3996-2333
特に、講演会当日の連絡はこちらにお願いいたします。
主催
チベット・モンゴル仏教文化センター TMBCC JP
集広舎
協力
認定NPO法人れんげ国際ボランティア会
スーパーサンガ九州
チベットを知る会
書評
ノンフィクション作家 小滝 透
ダライ・ラマの側近で、チベット仏教の高僧アジャ・リンポチェの著書『逆風順水』の日本語訳が出版された。
彼はチベット高原東北部で生まれ、アジャ・リンポチェ8世の転生霊童に認定される。その後、政府による非常な宗教弾圧に遭遇。文化大革命が収束し、わずかな希望が見え始めた時、彼の師たるパンチェン・ラマが遷化。政府が推す偽の転生霊童の教育係を命じられる。それだけはどうしても避けたいと亡命したリンポチェは、アメリカに定住し、現在はインディアナポリスのチベット・モンゴル仏教文化センター長を引き継ぎ、各地で忙しく法話を重ねている。本書は文章も平易で読みやすい。ぜひ、一読をお勧めするものである。
チベット人作家 ツェリン・オーセル
アジャ・リンポチェはチベット仏教ゲルク派(黄帽派)の大変尊敬されていた僧の転生化身です。ゲルク派は、我々の精神的指導者であるダライ・ラマ法王とパンチェン・ラマの両方が属する一派です。アジャ・リンポチェは400年以上続くゲルク派開祖の寺であるクンブム僧院の21代目の僧院長でした。
チベット人、モンゴル人、そしてチベット仏教の信徒にとって、アジャ・リンポチェが何を意味するかは言うまでもなく、黄金のように貴重な伝承の重要な一部です。これを中断させれば、伝承の全てが断絶する危険があります。しかし、アジャ・リンポチェの自伝を読むと、そのような壊滅的な災難に彼が何度も遭遇していたことがわかります。