このコーナーでは、様々な書籍をご紹介します。今回は、チベットの高僧の闘病生活を支えていた夫婦の心温まる回想録をご紹介します。
二〇〇九年に出版された本書は、チベットの高僧ロサン・ガンワン先生の闘病の記録とその間のご活動の様子が著者の平岡妃女さんの観点から分かりやすく丁寧に伝えられています。
初めに、ロサン・ガンワン先生の僧侶としての歩みについて、石濱裕美子先生が「本書に寄せて」のP六三に記されていますので、ご紹介させていただきます。「ガンワン先生はガンデン大僧院(チベット仏教の最大宗派であるゲルク派の総本山)の僧であった一九五九 年、中国軍によって国を追われ、二三歳でインドへ亡命した。亡命の後、ガンワン先生はインドに再建されたガンデン大僧院で博士の最高学位ゲシェ=ララムパ号を取り、その後ゲルク派の密教の本山ギュメ寺において密教の修行を積み、ギュメ寺の管長を勤められ、晩年はダライ・ラマ法王の五大弟子の一人に数えられる高僧として知られた」
また、平岡宏一先生は「ロサン・ガンワン先生のこと」六六頁から師僧であるガンワン先生とのご縁の日々を綴られています。
「意楽と信心と三昧耶に、専心したギュメの聖なる元管長の治療時のエピソードが著されたことに感謝いたします」序章に寄せられたダライ・ラマ法王のお言葉にあるように、この一〇〇ページ余りの本の中には、ガンワン先生やご縁の方々のご努力、そして当時の状況が明瞭に綴られています。
チベット仏教はお釈迦様の説いた教えをインドから直接に受け継いでいます。弟子の僧侶は師僧から、細部まで間違いなく教えを受け継ぎ、次の世代に正確に伝える役割を担います。ガンワン先生もお弟子を育てそして、体調がお悪い時にも来日し多くの方々に灌頂を授けてくださいました。
まだお読みになっていない方は勿論、既にご一読なさった方には再読をお薦めしたい一冊。 これは真実の物語です。
この一冊の中に多くの気づきを得ることができます。