ダライ・ラマ法王日本代表部事務所よりご招待いただき、十二月二十日〜十二月二十三日の間聖地ブッダガヤにて開催された国際サンガフォーラム・ブッダガヤ（International Sangha Forum Bodhgaya 2023）に当会副代表小林秀英氏、幹事小野常寛氏の二名が参加した。
本フォーラムのテーマは「伝統と現代をつなぐ、今日の世界における仏教の教えについての対話」であり、仏教史にも残るような規模の国際フォーラムになった。
各国僧侶によるプレゼン発表
特に主催がダライ・ラマ法王事務局やチベット仏教センターということもあり、多くのチベット僧侶の参加が見られた。
ブッダガヤにできた真新しいコンベンションセンターが満員になろうほどに集まった本フォーラムはダライ・ラマ法王様による開会の辞によって盛大に開催された。ご法話の中には「他者を助けたいと思うのであれば、自分の心を鍛える必要があります。法友に、これを心に留めるようお願いします」「自分自身の内なる平和を育むことで、世界の平和に実践的な貢献をします」「パーリとサンスクリットの伝統の本質は利他主義です。最も重要なことは、菩提心を育むことです」ということを中心に、菩提心の重要性と慈悲の実践を強調され、全世界の僧侶が熱心にそのご法話に耳を傾けた。
本フォラームの開催にあたって下記の目的を主催者側から共有された。
・パーリとサンスクリットの異なる伝統の僧侶同士の交流を促進すること
・多様性を尊重し、世界的な課題に対する智慧と慈悲を促進すること
・科学的見解と仏教の知恵を統合すること
・愛と親切心をもって相互作用を育むこと
・世界平和のために仏教の教えの実践と推進に捧げること
参加者はこれらに大きく頷きながらフォーラムは華々しく開幕された。
フォーラムの構成としては、「仏教と現代：仏教とテクノロジーの交わり」「智慧の深さを探る」「修行と経典における三昧」など九つの各テーマに基づいたセッションが設けられ、四十四人以上の僧侶がプレゼンを行い、三日目には当会幹事の小野常寛も「日本仏教における相互関係のつながり」というテーマでプレゼンを行い、各国の僧侶との交流を果たした。
各セッションは、チェアパーソンを司会として、六〜七人のプレゼンターによって各国の仏教伝統や研究内容を披露して質疑応答を取りながら理解を進めていった。
このフォーラムにおける最も重要な意義は、世界仏教の再編成であることが確認された。
主催はチベット仏教センターであるため参加者はチベット仏教の僧侶が多かったが、上座部（上座説）仏教であるタイ、スリランカ、ミャンマーなどの東南アジアの僧侶も多く参加していた。
ダライ・ラマ法王様は以前から、「上座部」と「大乗」という括りではなく、「パーリ」と「サンスクリット」という言語の相違における世界仏教の再編成の必要性を強調されており、パーリ語圏とサンスクリット語圏の仏教の交流を促進されていた。事務局は、二〇二一年からパーリ・サンスクリットコミュニティの大会を発端として、少しずつ着実に交流を深めていき、本フォーラムが史上最大規模の交流イベントとなったのである。
閉会の辞でも各国の多くの高僧や要人が言及されていたが、大乗仏教と上座部仏教が交流する機会は、数十年前までは皆無であり、全く考えられなかった。それが今回のフォーラムで実現し、世界仏教の真の交流がここに始まったといっても過言ではなかった。今までは、それぞれの仏教は違いばかりに注目してお互いを敬遠するような立場を取っていたが、このフォーラムでは違いを認めながらも、共通点や共通理解を確かめ合い、お互いに敬意を払いながら交流している様子を幾度となく確認することが出来た。
私達は皆「仏弟子」であるということを互いに確認しあい、仏道を共に修していく「仲間（サンガ）」であるということを分かちあったのであった。
最終日である四日目は大菩提寺（Maha Bodhi Temple）の菩提樹の御前にてサンガメンバーが一同に集まり、ダライ・ラマ法王猊下を大導師として世界平和祈願が執り行われた。各国十一の言語にて読経され、世界中の平和を希求する想いが大菩提寺にて声高らかに響き渡った。
日本団の導師として小林副代表が発音を行い、日本団八名による般若心経が読経された。言語は違えど、平和を希求する思いは同じであり、仏教という法の灯火のもとに世界中から集ったサンガメンバーがそれぞれの慈しみを感じることのできる、大変貴重な時間であった。
ダライ・ラマ法王様は、お話の中で「心の煩悩が鎮められる方法を理解すれば、私たちは道を辿ることで最終的な悟りに到達できることがわかるでしょう。これが私が皆さんと共有したいことです。仏陀の教えを自分自身の内に統合することです」と仰られた。仏教において最も重要である場所において、このお話を聞くことができたのは当に珠玉の一時であり、今まで感じえないほどに平和に満ちた時間であった。
（後編へ続く）
