講演を行う林侃道師

令和5年6月2日、真言宗智山派総本山智積院(京都市左京区)にて開催された第24回智山総合研修会において『平和なき世界に仏教者ができること~紛争と非暴力主義を考える~』というテーマで講演の機会をいただきました。

ベトナム戦争下にフランスへの亡命を余儀なくされたティク・ナット・ハン師が唱えたエンゲージド・ブディズム(社会参画仏教)の語義と概念を解説し、過去から現在に至る世界各地における仏教徒の社会的な取り組みを紹介する中でチベット問題に触れ、ダライ・ラマ法王の非暴力と対話による平和への活動、日本国内の支援活動としてスーパーサンガについてもお話ししました。

社会参画仏教と呼ばれる運動では、ベトナム、ミャンマー、チベットなど戦争や侵略によって国を追われた仏教徒が亡命地から故国の解放を世界に訴える事例はもとより、スリランカ、タイ、台湾などでは国内の貧困や社会問題に仏僧や仏教徒が真正面から対峙して大きく世情を変えた事例など、世界中で多くの仏教者が世界の平和や人々の幸福のために尽力しています。

海外に目を向ければ、戦争や貧困、民族差別など現代の日本社会からは想像もつかないような苦難に直面している地域がありますが、その渦中には、慈悲と利他の精神をもって人々と苦しみを共にし、命がけで行動する仏教者たちが奮闘しています。

日本にいる私たちも同じ仏教徒の一人として、彼らの姿から感じること、学ぶべきこと、行動するべきことがあるのではないでしょうか。まずは世界にある現実に目を向け、それを知った上で、私たちはどう生きるのか。それぞれの生き方が問われる時代です。

当日は台風2号の影響で交通網の遅延や運休が相次ぎ、研修会の開催自体が危ぶまれるような天候でしたが、仏天のご加護あって演台に立つことができました。

ご聴講いただいた皆様と智山青年連合会はじめ関係各位に心より御礼申し上げます。