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スーパーサンガ会報誌、平成二十八(2016)年春号より、飯島俊哲氏のリポートをご紹介いたします。

 「キキソソー、ラーギャロー!!」
 信州松本の山中にこだまするチベット人たちの歓声にも似た高らかな声。ここは標高一五〇〇メートルの場所にあるキャンプ場。
 このかけ声は、チベット人たちが特別な日に、ツァンパ(チベット人の主食で、大麦を炒って粉にしたもの)を空に向かって勢いよく撒くことと合わせて発せられる。この風習は、チベットに仏教が導入される以前に遡る伝統的なものだ。日々大切にされている神仏をはじめ、山や川などの神々を讃え、その威風を称賛するとともに神々に感謝し、自分たちをお守りくださいという願いのもとに行われる。
 昨年、初めて「キキソソチベットまつり」(KiKi So So Tibet Festival)と銘打ったイベントが長野県松本市入山辺にある『樵礁カオス』というキャンプ場で開催された(平成二十七年九月十二〜十三日)。
 二日間に渡って開催されたこのイベント、伝統からポップス、オリジナルまで個性あふれるチベット音楽に、大自然の山々に精通し薬草を自ら探し出し薬を作るチベット医学のレクチャーとワークショップ、そしてチベット僧侶による日常に役立つ仏教のお話とチベットステップダンスにチベット体操、さらにチベット&ボリウッドダンスタイム、夜には解説付きでチベット映画も上映された。
 また東京からチベットレストラン&カフェの出店があり、長野県内からも飲食店や雑貨屋など様々なマーケットが集まり、祭りの雰囲気に花を添える。そしてイベントの中心であるチベット音楽のライブでは、オーストラリアからやって来たテンジン・チョーギャル氏をはじめ、多くの縁あるアーティストたちが集った。さらには昨年全国公開され反響を呼んでいる映画『ルンタ』の監督、池谷薫氏と主役の中原一博氏によるトークショー、東京外語大学の浅井万友美先生によるチベット語会話講座があったりと紹介しきれないほど盛りだくさんの豊富な内容だ。

kikisoso02 当日は日本に住むチベット人が、東京・大阪・愛知・岐阜など県外から約三十人も集まり、その他一般の来場者を含めると参加者は百人規模の大イベントとなった。印象的だったのは祭りの雰囲気。まるでチベットもしくはインドやネパールにあるチベット人コミュニティーで開かれている祭りに来ているような、開放的で陽気なチベット文化の空気と参加者の笑顔で溢れていた。
 大成功の中で幕を閉じたこのイベント。発起人の主催者は、松本市内在住のチベット人と日本人の夫婦だ。
 日本には現在およそ百人ほどのチベット人が移住して来ている。しかし日本社会の中で必死に日々の生活を送る彼らは、なかなかチベット人同士の横の繋がりを持つことが難しく、かつ自分たちの大切な文化やその楽しみを味わう場も限られているという現状がある。そこで、参加するチベット人が楽しめて、そのうえ日本国内にいるチベット人同士の輪が広がることをテーマとしてこの祭は企画された。
 当日にこぎ着けるまでの準備期間は苦労の連続だったという。日本語検定一級を取得し、晴れて福祉の仕事についた主催者の彼は、すべきことの多さに仕事を辞めてまで準備に打ち込んだ。
 そんな主催二人の熱い思いと願いは、祭り当日に大きく花開いた。参加したチベット人たちの満面の笑顔とチベット人たちが持つ底抜けの明るさと陽気さに誘われて、思わず歌い踊りだす日本人の参加者たち。またイベントを楽しむことを通して初めて豊かなチベット文化に出会った人たちは、現在のチベットが直面する苦しみにも自然と意識が芽生え、居合わせたチベット人と話し込む姿もあちらこちらに見られた。
 この「キキソソチベットまつり」、多くの要望に応えて今年第二回目を企画準備中だ。スーパーサンガもこの祭りに協賛し、協力体制を整えている。実行委員会ではご支援協力を随時募集中。また詳しい開催要項が決まり次第、この会報でも告知していく。

(文責:飯島俊哲)

■お問い合わせ:〇八〇─六一四四─七二〇三(柳田)
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